専業主夫、ポン吉の徒然なるままに

20年近く主夫をしてきたポン吉の備忘録のようなブログ。

あの時はまだ銀行振込の利便性を知らなかった

ポン吉は高校卒業後、進学のため親元を離れて一人暮らしをはじめることになった。

新生活を送るためにアパート探しや生活用品などを購入する必要があった。

学校の入学金もポン吉が納めに行くので、親からかなりまとまった現金を手渡されていた。

アパート探しに思った以上に時間がかかってしまい、入学金の入金締め切り日に学校に納めに行くことになってしまった。

初めての銀行振込

学校に行くと、入学金は学校ではなく銀行に振り込むように言われた。

銀行が閉まるまでまだ時間はあったが、世間知らずのポン吉はあせっていた。

振込用紙に書かれた銀行がどこにあるのかも、全くわからなかったので、電車に乗るのことはしなかった。

すぐにタクシーに乗って、振込用紙に書かれた銀行の支店まで行ってもらうように運転手にお願いした。

都会に来て、初めてタクシーに乗った。というか一人だけでタクシーに乗ったのも初めてだった。

運転手に銀行がどのあたりにあるのかを尋ねたら、ポン吉の知っている駅名だったのでだいたいの方向はわかった。

とは言っても、電車の路線図が書かれた名刺サイズのカードを見ていたのでほんとに大雑把な理解だった。

ポン吉は、電車だと目的地までぐるりと回っていくことになるが、車だと一直線に進めるので早いだろうと勝手に考えていた。

しかし、ポン吉は都会を舐めていた。

タクシーはすぐに渋滞に捕まった。

ポン吉が3時までに銀行に着きたいと言うと、少し考えてから運転手はぎりぎりだけど間に合わせようと言ってくれた。

タクシー運転手の言葉は、本当だった。

ちょうど3時に銀行の支店の前に着いた。

ただしタクシーが止まったのは、道路を挟んで銀行とは反対側だった。

歩行者は赤信号だった。

ポン吉が銀行を見つめていると、支店のシャッターが下ろされているところだった。

信号が青になるやいなや、銀行に駆け出したが、既にすべての出入口が閉ざされていた。

このままでは入学できなくなってしまうので、ポン吉は必死で銀行のシャッターを両手でたたいた。

ポン吉は、

「すみません! すみません!」

と叫びながら、銀行のシャッターを叩き続けた。

すると、シャッターが少し開いた。

少しだけ開いたところから男性が

「どうしました?」

と聞いてきた。

ポン吉は、

「入学金を納めたいんです! 今日までなんです! お願いします!」

と大声で叫んでいた。

しかもシャッターの隙間に向かって両膝を着いていたので、通行人から見れば銀行のシャッターに向かってポン吉が土下座しているように見えてたはず。

今思えば、結構みっともなかったに違いない。

銀行員はすぐにポン吉をシャッターの中に入れてくれて、入学金の納付手続きを行ってくれた。

この時、一生懸命に急いでくれたタクシー運転手や時間外にもかかわらず対応してくれた銀行員に心から感謝している。

都会は世知辛いと聞いていたが満更でもなかった。

そしてこの一件は、ポン吉の中ではちょっとした良いエピソードだった。

この件があった後、ポン吉は銀行振り込みをすることは当分なかった。

アパートの家賃やアルバイト代もすべて現金の手渡しだった。

貧乏学生だったということもあり、銀行との接点はなかった。

銀行振込は便利

3年ほど経ってから友人と旅行に行くことになり、その代金を銀行振込しなければならなくなった。

ポン吉が振込先を見て、

「結構ここから遠いな」

と言うと、友人が

「まあ、いいじゃんどこでも、銀行振込だし」

と答えた。

ポン吉はすぐに

「でも、ここに書かれた支店まで行かないといけないだろ」

と返すと、友人が笑いながら

「何言ってんの? 振込はどこからでもできるよ」

と世間知らずのポン吉を呆れ顔で見つめていた。

ポン吉はその時はじめて、銀行振込がどこからでもできることを知った。

それまでは振込先の銀行支店でしか手続きできないと思っていた。

この瞬間、ポン吉が美談だと思っていた入学金納付エピソードは、世間知らずの男の子が大騒ぎして大人たちを振り回したという迷惑話になってしまった。

今から30年ほど前の話だが、ポン吉は子供たちにこのエピソードを話したことがある。

「よく考えて準備してから、行動するように」

でないとこういうことになってしまう人もいると。

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