専業主夫、ポン吉の徒然なるままに

20年近く主夫をしてきたポン吉の備忘録のようなブログ。

オールナイトの映画館でブルース・リーを観て泣く

ホテル代わりに映画館

最近の映画館はほとんどが座席指定で上映ごとの入替制になっている。

しかし、ひと昔前までは座席指定がない映画館が多かった。

オールナイトでやっている映画館などは、終電を逃した人が朝までホテル代わりに利用していることもよくあった。

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ポン吉もまだ会社員だった頃そういう利用をしたことがあった。

その日はついつい飲みすぎてしまい、終電を逃してしまった。

ただ他のみんなは帰宅可能な時間だったので、ポン吉は独りぼっちになった。

どこかホテルを探したが、終電後はどこも一杯だった。

しかたなく深夜喫茶を覗いたが、そこもポン吉と同じような客で一杯だった。

そこでオールナイトで上映している映画館があるのを思い出し、行ってみることにした。

オールナイトでブルース・リー

その日はブルース・リー主演の映画が何本かオールナイトで上映されていた。

ポン吉は宿の代わりに映画館を利用するつもりだったので、上映作品はどうでもよかった。

ポン吉が映画館の中に入るとすでにブルース・リーは、

「アチョー! アチョー!」

と、あの独特の奇声をあげながら、ヌンチャクを振り回して闘っていた。

眠るつもりでいたポン吉だったが、気がつくとブルース・リーのアクションに見入っていた。

ポン吉が入館した後も、上映中に人が入ってくることがよく会った。

みんなポン吉と同じ終電を逃した者たちだ。

ポン吉の近くの座席に男女のカップルがやってきた。

そのカップルは上映中にもかかわらず、何か話をしていた。

もっとも、ポン吉の後ろにいる客も熟睡していびきをかいていたので、小さな話し声などあまり気にならなかった。

ただ、男の声が少し大きくなって

「だからあ、何度も言ってるだろ‥‥」

と言うのがきこえたので、ポン吉がカップルの方をチラ見したが、暗くて顔は良く見えなかった。

ただ、女が

「だって、信じられない‥‥」

と言っている声は少し泣いているように聞こえた。

終電間際に駅のホームでカップルが口論するのをたびたび見かけることがあったので、その類の痴話げんかだとすぐに分かった。

たぶん男の浮気を勘ぐっている女が泣き出したんだろう。

ブルース・リーの奇声と後ろの客のいびきとカップルのひそひそ話のなかで、ポン吉はいつしか眠りについていた。

気がつくと、映画2本分くらいは眠っていたようだった。

そろそろ始発が動き始める頃なのか、映画館の客がさっきより少なくなっていた。

ポン吉の後ろの客のいびきも聞こえなくなっていた。

近くにいたカップルはまだ映画を観ていた。

ちょうどクライマックスのシーンで、ブルース・リーが軽快な動きとともに

「アチョー! アチョー!」

と叫びながら敵を次から次へと倒しているところだった。

映画が終わりポン吉が座席を立つと、カップルも帰ろうとしていた。

見ると女はまだ泣いていた。

どんだけ長い時間、痴話げんかしてたんだ、一晩中泣いていたのか、と少し驚かされた。

映画館の外に出ると辺りはもう薄っすらと明るくなっていた。

ポン吉は始発に乗るため駅に向かおうとしたが、さっきのカップルが気になったので映画館のほうを振り返ってみた。

するとカップルは映画館の看板の前で写真を撮っていた。

映画館から出てくる他の客も同じように写真を撮っている者がいた。

看板をよく見ると、

「ブルース・リー 追悼特集 オールナイト上映」

と書かれていた。

7月20日、その日はブルース・リーの命日だった。

結局

カップルの女は痴話げんかなどではなく、ブルース・リーの在りし日の姿を偲んで涙していたのだ。

ポン吉は何も知らずに入った映画館で、映画もろくに観ずに眠っていたのを少し恥ずかしく感じた。

もしかすると、ポン吉の後ろでいびきをかいていた人のように映画館をホテル代わりにしていた者たちは、そのことに気づいてポン吉より一足先に映画館から抜け出したのかもしれない。

ポン吉たちはいい迷惑者だったに違いない。

これ以降、ポン吉は迂闊に映画館で眠らなくなった。

ただ、ウトウトすることは時々あるけれど。

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