専業主夫、ポン吉の徒然なるままに

20年近く主夫をしてきたポン吉の備忘録のようなブログ。

人の振り見て我が振り直せ、過ちては改むるに憚ること勿れ、泥棒とおてもやん

学生の頃、

風呂無しアパートに一人で住んでいたポン吉のところに、友人たちがよく遊びに来ていた。

貧乏学生がお金を出し合って、1人では食べることが叶わない鍋や焼き肉を食べながら、酒を酌み交わしていた。

悪戯

酒も進んで夜も更けてくると、1人また1人と布団も敷かずにその場で寝てしまう者がでてくる。

そうやって宴の最中に寝てしまう者に、よくイタズラをするのが恒例だった。

寝ている者の顔を「泥棒」のように、マジックで口の周りを黒く塗ったり、

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「おてもやん」のように頬を赤く塗ったりしていた。

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たいていの場合は、イタズラされた本人が朝起きた時に気づくか、誰かが教えてあげるので問題はなかった。

ある日、ポン吉と東京君と長崎君(もちろん仮名)の3人で、いつものようにポン吉のアパートですき焼きを食べながらお酒を飲んでいたが、その日は明け方まで誰も眠ることはなかった。

そして始発が走るころに、長崎君がポン吉の家を出て行った。

彼はその日、実家のある長崎に飛行機で帰ることになっていた。

ポン吉と東京君も長崎君の実家に遊びに行く予定だったが、貧乏学生だったので飛行機ではなく自動車で行くことになっていた。

だから、一睡もしていないのは良くないので長崎君を送り出して、ポン吉と東京君はひと眠りすることにした。

東京君はすぐにいびきをかき始めたが、ポン吉はなかなか眠れなかった。

そこでポン吉はいつものイタズラを東京君の顔に施した。

東京君は笑顔のかわいい「おてもやん」になった。

しばらくするとポン吉も眠りについた。

ポン吉が目を覚ますと既に東京君は出かけていた。

彼は自分のアパートに戻って着替えなどの準備をしてから、再びポン吉のアパートに戻ってくることになっていた。

数時間後に東京君がやってきた。

彼を一目見てポン吉は愕然とした。

東京君はまだおてもやんのままだった。

おてもやんとして電車にも乗って数時間行動していたのだ。

多くの人の好奇な視線を独り占めしていたはずだ。

ポン吉はおてもやんにイタズラの事実を告げるのは、ショックが大きいと思い、ひとまずは黙っておくことにした。

どうせ今からは、2人だけで車に乗って東京から長崎まで行くのだし、途中で気づくだろうと考えていた。

貧乏学生だったので、高速道路は使えないし、もちろんホテルに泊まるなど論外で外食もできなかったから、食料は事前にパンや飲み物を車に積み込んでいた。

なのでポン吉とおてもやんが人目に触れることはあまりなかった。

だからおてもやんも自分の変身に気づいていなかった。

ただガソリンスタンドは当時セルフがなかったので、運転席を覗き込むように店員が話しかけてくるので、おてもやんには申し訳ない気がした。

店員はポン吉とおてもやんを見ると、営業スマイルではない笑顔を見せていた。

ポン吉は今さら東京君がおてもやんになっていることを知らせるのは、酷だと思った。

1泊2日の行程でポン吉とおてもやんは無事に長崎君の実家に到着できた。

ポン吉たちの乗っていた車は知人から借りたポンコツだったので、真夏だというのにエアコンはなかった。

暑さを凌ぐためポン吉もおてもやんも短パンとTシャツ姿だった。

おまけにずっと窓を開けっぱなしで走っていたので、ポン吉とおてもやんの髪はボサボサだった。

それに風呂にも入っていなかったので、見た目はかなりみすぼらしかったと思う。

長崎君の家の敷地に車を停めると、綺麗な女性が家の中から出てきた。

たぶん長崎君のお母さんだと思ったが、その女性はポン吉とおてもやんを見るとすぐに笑いながら挨拶をしてくれ、長崎君を呼んでいた。

笑っているのはポン吉たちの身なりよりもおてもやんの顔だということはわかっていた。

すぐに長崎君が家の中から出てきた。

するとポン吉たちを見て、いきなりおなかを抱えて大きな声で笑い出した。

長崎君が笑っている理由はわかっていた。

ポン吉はこれ以上おてもやんが何も知らないまま人に笑われているのは申し訳なく感じたので、おてもやんの顔になっていることを東京君に教えてあげようと決心した。

ポン吉がおてもやんの方を振り向くと、おてもやんもポン吉の方を見ていた。

そして急に、おてもやんが頭を下げて

「ごめん! お前の顔は泥棒のままで‥‥」

と言い出してきた。

ポン吉はおてもやんの言葉の意味がすぐには理解できなかった。

しかし次の瞬間、長崎君が

「お前たち、長崎までおてもやんと泥棒の顔してやってきたの?」

と笑いながら言ってきた。

過ちては改むるに憚ること勿れ

ポン吉が東京君におてもやんメイクしたように、東京君もポン吉に泥棒メイクをしていたのだ。

お互いに途中で気づくだろうと思いながら時間が経ってしまい、ついには言い出しにくくなっていたのだった。

それにしても、ポン吉と東京君は泥棒とおてもやんとして東京から長崎までドライブしていたのに、お互い自分自身の異変に気づいていなかった。

しかし、車でよかった。ホテルに泊まらなくてよかった。

というかホテルでは宿泊拒否されていたかもしれない。

もし飛行機で東京から長崎まで行こうとしていたら、駅や電車の中、空港や飛行機の中でいい笑いものになっていたに違いない。

それどころか、不審者ということで飛行機に乗せてもらえなかったかもしれない。

本当に、

人の振り見て我が振り直せ

という言葉を痛感させられた出来事だった。

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